アンネは、私たちと変わらない、いい意味で普通の女の子でした。
不勉強を晒すようですが、「アンネの日記」について何も知らないまま観劇しました。パンフレットや、劇中も本の朗読と共に進行していったので、わかりやすく優しいつくりになっていました。
立体的でリアルな舞台装置には閉塞感があり、そんな中で元気に走り回るアンネの姿が印象的でした。
劇が始まって最初は、アンネのわがままやいたずら心に、少しやきもきさせられましたが、時が経つにつれ、それは大人たちに向けられました。ですがそれも、衣食住に困ることなく生きてきた私なぞには計り知れない心からくるものなのだと思いました。
舞台上には、確かに緊張感や窓の向こうから染み出してくる“おかしさ”があって、伝染するように人々にヒビが入っていくようで、固唾を飲んで見守るしかありませんでした。
苦しい時の中で唯一の希望は、若い恋愛の力でした。ペーターがアンネに感じた変化を、私も同様に感じることができたので、二人の距離が近づいて行くのは必然でした。不器用なペーターと、乙女のアンネをいい形で演じられていたと思います。
アンネは、やっぱり聖人ではありませんでした。それでも、輝きを放ち続けて生きた彼女だから、その存在が今にも生き続けるのだと思います。小さな体に大きな声を持ったアンネのことを、演劇という表現で知る機会があってよかったです。早弓さんのまっすぐな声と瞳で、多くの人に伝わることがあるのではないかと思います。
11月3日11時 札幌市こどもの劇場やまびこ座
投稿者:すこげ(10代)
text by 招待企画ゲスト